情報の氾濫する現代のマーケットで、企業が一方的に発信する商品情報を生活者に届けるのは困難です。一方で生活者は身近な人物の発信情報に共感しつつ、自分で商品について語りたいとのニーズをもってSNS上で行動しています。
つまり、企業の発信情報を届けにくい現代においては、生活者から生活者に対する情報流通を促す必要があるのです。そこで本記事では、生活者から生活者へと連鎖反応を起こしながら流通する情報の理想形について解説します。
本記事を読むことで、生活者が自発的に発信してくれる商品情報がどのようなものか理解できます。
早速、SNSにおいて生活者から生活者へと届けられる情報はどのような姿であるべきかという点について確認していきましょう。
SNSにおいて生活者は、他のユーザーが発信した情報に触れながら商品への関心を高め、購入の意思決定を行います。そして、最終的に購入者自らが発信者となって、他のユーザーへ情報を届けます。
つまり、生活者は自ら語ることのできる商品を求めているのです。そこで重要になるのが「ナラティブ」という概念です。
マーケティングにおけるナラティブは「生活者自身に語られる生活者自身の物語」を意味します。これだけではナラティブという概念の正確な意味をイメージしづらいと思うので、以下では似たような意味で用いられるストーリーとの違いを確認しましょう。
混同しやすいナラティブとストーリーについて、マーケティングの視点からの違いを次の通りまとめました。
ナラティブ |
ストーリー |
|
意味 |
生活者自身に語られる生活者自身の物語 |
物語 |
ベクトル |
商品情報がさまざまな生活者の共感と結びつきながら複線的な動きをする |
商品情報が企業から生活者に対する一方的な伝達として直線的な動きをする |
効果 |
商品について生活者に起こる共感が別の生活者に伝わる |
商品について企業の考える物語を生活者に伝える |
このようにストーリーとして語られる商品情報は、企業から個々の生活者に対して一方的に伝達されるものです。一方でナラティブとして語られる商品情報は、共感を接点としながら生活者から生活者に連鎖的に伝達されるところに最大の特徴があります。
別記事で解説した通り、共感を重要な要素とするSNSにおける生活者の購買行動の中にバズる仕組みがありますが、そこで語られる商品情報は、ナラティブの形式であることが理想なのです。
生活者がナラティブとして商品情報を語り、それに触れた別の生活者の中に共感と関心を起こす。この連鎖反応を起こすためには、次の3つのポイントを理解した上でプロモーション活動の全体を設計する必要があります。
複数の生活者がナラティブとして商品情報を語るためには、商品に複数の生活者の共感を呼ぶ余白がなければいけません。マーケットにおけるごくわずかな人物のみが共感できる商品情報では、連鎖反応は起きにくいのです。
こうした商品情報を設計するためには、SNSに存在する各コミュニティにおいて、共感を呼ぶ要素を可視化する必要があります。具体的な手法はこちらの記事で解説しているので確認してみてください。
ナラティブで語られた商品情報に大きな連鎖反応を起こすためには、タイミングも重要です。タイミングは次の要素から計っていきます。
・世の中のトレンド
・世論の状態
・ターゲットとなるコミュニティの存在
・ターゲットとなるコミュニティにおける流行り
また、タイミングの効果を最大限に得るためには、日頃からのこまめなコミュニケーションで商品・ブランドが顧客から一定の理解と共感を得ている下地も重要になります。
ナラティブは生活者によって語られますが、連鎖反応を大きくするためにはインフルエンサーの活用も重要です。なぜならば、インフルエンサーは次の2つに長けているためです。
・商品情報をナラティブとして語ること
・特定のコミュニティへの高い訴求効果
ただし、インフルエンサーを活用する場合は、あくまでユーザーと同じ目線で商品情報を語ってもらうように注意してください。セールスのにおいの強い形で商品情報を語らせると、ナラティブの連鎖反応は起きにくくなります。
SNSを使った最新のマーケティングでは、生活者が別の生活者の購買行動を促します。そのため生活者は、セールスに対する抵抗感のない状態で商品情報に素直に共感できるのです。
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